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十日の菊と枯れ尾花

 

幽霊が怖くなくなったのはいつからだろう。

気付けば私はリアリストなんてものに当てはまる様な、物理概念にとらわれたつまらない人間になっていた。SF映画を楽しむのにも一苦労だよ。

しかしこんな自分だからこそ、未知の分野の中でも宇宙については興味と期待が絶えないんだ。

暇つぶしついでに今回は私の昔話に付き合ってもらいたい。

 

幼い日の私は、自然に囲まれて生活していた。

メディアから隔離された、オーガニック、野生なんて言葉を連想しそうな日々。

五つくらいの時だったか、晴れた夜、家の庭にテントを張り、中に布団を敷いて親と星を見ながら寝た事があった。

今思えばだいぶおかしなことをしていたんだと思うが、その日はさらにおかしなことが起こった。

星空を眺めていた時だ。

ふと、視野の端に光る点が動いているのに気付いた。

飛行機だ。そうだろうとも。

しかしそれは夜空の真ん中までゆっくりと、真っ直ぐに進んでいたが、奇妙な事にそこでぴたりと動きを止めた。

どれだけ経っただろう。急に動きを止めた事がひどく不自然で、不思議で、その光の点から目が離せなくなっていた。

静止してから2分程いや、もっと短かったのかもしれない。その点は突然、まばたきを促す程の青白い閃光を放ったかと思うと、とてつもない速さで視界外に消えていった。それも来た道を戻るように。

私の親もそれを目撃したようで、今のは何だったのかと二人でただ困惑していたのを覚えている。

 

あれが一体何だったのかは知る由もなく、今となっては知りたいとも思わないけれど、それを思い返すたびに私の世界は広がって、私は考える事をやめられるんだ。